鳥の居る場所 ~チャンネルを合わせろ!~      2017,11

 

 

鳥居というものは神社の目印となるものです。「神道」という日本人を形成する古来からの精神を象徴する社の門にあたるものです。

このシンプルで象徴的な形は私たちの生活空間と神の居る聖域の境界となる場所に建っています。

この形は日本人の精神的な記号となり、歴史を継承した役割が備わっています。

ですが、この象徴的な形がいつの時代から現れ、どこから来たのか?はっきりとは分かっていません。

同様な形、役割が近隣の国に存在します。

ラオス山中に止まり木の様にあったり、境界の門番、魔除けなど同様な意味を韓国や中国において生活空間に見ることができます。

諸説あるのですが、ある説では鳥居の朱色は血の色を表し、魔除けの意味を持つ。

古代のへブライでは宗教指導者の指示で魔除けのために家の玄関の鴨井と柱に羊の血を塗ったことが起源とされる。

また、古代ヘブライの一支族での方言として「torii」は門という意味を持っています。

韓国では一つの集落の入り口にあたる門にあたる所に鳥の造形物を飾る風習があったり、中国でも一般住宅の門扉に鳥の造形物を飾ったりする風習があったりするそうです。

この東アジアにもみられる風習は「鳥」が神に近い存在という考え方から由来しています。この概念は世界各地でも共通に存在していました。

古代の人々は大地と天の間で生活する存在の鳥を「大地の人間」と「天の神」との間を自由に行き来することからそれらを繋ぐ役割があると信じたそうです。

サブタイトルとしての「チャンネル」には生物間の情報共有や共通認識という意味があります。

私は人の思いや経験や過去の教訓が次世代にどのように伝わっていくかという事を作品制作においてとても大切に考えてます。

政治、思想、技術、街の姿が変化してゆく中でも変化しないものがあります。祖先から脈々と受け継がれて形式として現代に残されたものです。それが文化なのです。

人々の生活の中で文化形式が生き続けることによって人の寿命を超えた時間軸で祖先の思いを感じる事ができるのです。

 人は鳥居をくぐることで世間とは隔絶した異空間に訪れることができ、そこで過去の人々の思いと繋がる事ができ、過去の人々と情報を共有する事が出来ます。鳥が空を駆け巡り、地域を見守るように鳥居というものは何世代もかけて地域を見守り同時代の人々の生活から過去から現在までの人の生活まで繋いできました。私たちはこの象徴的な鳥居の形の下で過去の力強く生きた祖先の想いと繋がり、私たち現代人が感じ、学んだ教訓を含めた情報を次世代が繁栄し続くようにバトンタッチしていかなければならない。それをこの鳥居の形が私たちに教えてくれることなのです。伝えていかないといけないものもあります。それが文化の役割であると思います。すべての人が伝承者なのです。

 

     美術家 八尋晋